和漢書目録・解説
東京天文台所蔵 天文暦学関係和漢書目録 / 内田正男・伊藤節子
Catalogue of Japanese and Chinese Books on Astronomy and Calendario graphy Preserved in the Library of the Tokyo Astronomica1 Observatory by M. Utida and S. Ito (昭和48年12月28日受理)
はじめに
東京天文合の所蔵本については、1969年に広瀬秀雄氏が、東京天文台所蔵・和漢書写本類仮目録(I)として騰写版刷58頁のものをだしておられる。私達の本目録作成の意味もほぽその序文につくされているので、まずその序を引用する。
「数年前に文部省科学研究費(総合研究)によって江戸時代の天文学の研究を行なった時、文献所在を示す目録の必要を痛感した。その時東北大学所蔵の天文・測量関係の目録は平山 諦氏によって作成された。しかし東京天文台のものについては印刷に至らなかった。今回以前の研究を継続することができたので自用のために作ったカードに基いて急いで仮目録を印刷することにした。特にこの事業に専念ずる時間もなかったので単に書名をABC順にならべたものにすぎず、書誌学的記載も全く不完全なものであるが、天文学史研究者の御参考になれば幸甚である。今回の目録では頒暦類は特殊なもの以外は収録してないし和算書も同様である、機会を得て補遺を出したいと考えている。今回の目録は応急用のものである」
前版はこの序にあるように応急用のものであり、今回はその補遺が目的である。然し書誌学的記載の完全を期すことは初めから考えず、記載事項については前版をほぼ踏襲している、ただ、上記目録は50部しか印刷せず既に残部がないこと、第2に、既に天文台の所蔵本となっている平山清次、早乙女清房、前山仁郎3氏旧蔵本がごく一部しか記載されていないこと、第3に序にあるように算書の目録が含まれていないこと、以上の理由により新らしい目録が要望されているので、できるだけ使い易いもので、しかも脱漏のないよう心懸けながら作成した。
編集方針
記載書目の取捨は私達なりの判断で大体次のようにした。
和書は明治5年以前、即ち旧暦時代の刊本・写本を主として編集してあり、それらについては余さず載せることにした。
明治6年以後のものでも、明治初期の天文・暦の啓蒙書、あるいは仏暦関係の和とじの本は記載してある。然し例えば明治32年版「西川如見遺書」明治38年版「近藤正斎全集」あるいは明治43年版「秦山集」等の活字組の復刻本は記載していない。次に中国本については、古いものでも四書五経の類はのせていないし、逆に光緒年間以後の活字本でものせてあるものもある、中国本は、古くから活字組があり、又本目録全体から見れば少数でもあるので和本とは少しく異なる方針で取捨した。
目録の体裁
- 全体を天文暦学・算書・測量書・星図類・推算稿・編暦関係・観測録・雑の8部に分け最後に暦本類を付した。
- 各部ともアイウエオ順に並べたが、推算稿・観測録と暦本類のみは年代順にした、
- 記載事項は、番号・書名の次に巻数、それから刊本・写本の別と冊数を記し著者名・刊行年は判る限りかならず記載した、刊年不明のもので序の年の判るものはかわりにそれを記し序の字を付してある。その他の註記は適当に入れた、著者名不明の写本類(主に和算書)では表紙に書いてある所有者名かも知れぬ名を( )に入れて記入した。
- 増補・欽定・訓蒙などを冠したものの多くはそれらを取り去った題名で引くようにした。
- マイクロフィルムより焼付けて製本してあるものは*を付して記載した。
- 5および頒暦類以外のものには通し番号を付けた、但し後日の追加を考慮し分類別に1000位の数を変えた。3桁の番号のみのものが天文暦書で、1000位の数が1のものが算書、2が測量書、3が星図類、4が推算稿、5が編暦関係、6が観測録で7000台が雑の部である。下3桁の数は999の次0に戻ることにする、
- 主な暦法書などについて大綱目索引、日本人については人名索引を付した、但し人名の読み方は不明なものについても特に考証した訳ではない、常識的に2通りによめそうなものはその双方に入れた。なお暦本類についてはさきに内田が仮目録の(II)として謄写版刷りで出版したことでもあるので、特殊な暦・七曜暦と頒暦については古い所にとどめて巻末に付した。頒暦は正徳年間まで記載したが、それ以後は、享保4、21、元文2、寛保3、寛延2の5年分を欠いているが他の年度については殆んど2部以上残っている、参考として外国暦について言えば、中国時憲暦は、嘉慶15、同21、道光元を除き乾隆55年(1790)より道光30年(1850)まである。ドイツ天体暦は1866年を除いて1776年より全年、英国航海暦は1836、56以外は1800年より揃っている。