貴重資料展示室

宣明暦

宣明暦法(せんみょうれきほう)は、渤海(ぼっかい)を経由して輸入された中国の太陰太陽暦法である。貞観四年(862)から貞享元年(1684)までの823年間と、我が国で最も長く使われた暦法になった。それだけ長く使われた理由は、遣唐使の廃止(894)で新しい中国の暦が入ってこなかったことや、長い戦乱の中で文化や学問も衰退し新しい暦を作る土壌がなかったことによるだろう。

江戸時代になり平和が訪れると暦法に関する研究が盛んに行なわれるようになり、渋川春海によって初めての日本の暦法「貞享暦」が作られ、貞享元年(1684)に宣明暦はその役目を終えた。

今回展示した書物は宣明暦法に関係するもので、年代的にも古く貴重な書物である。

『暦家秘道私記 (内題 宣明暦 注定付之事)』 賀茂在富(あきとみ)著 自筆本1冊

この本は賀茂在富の自筆本であり、永正八年(1511)賀茂在富の署名がある。賀茂家は代々暦道を司った家であったが、賀茂在富は息子に殺害され、賀茂家は在富の代で一時的に途絶えた。

この本には日食・月食の推算に関するメモなどが書かれている。応永二十七年(1420)に賀茂在方(あきまさ)が表し、その後、賀茂家の秘本として転写された。在富はその写本をもとに写した。朱で書き込みがある。

『宣明暦』 寛永二十一年(1644) 刊本3冊

宣明暦のテキストである。この本の特徴は多色刷りの刊本であることで、朱、青の色が刷られている。また、表紙の色と紙質は江戸初期に発行された書物に使われている代表的なものである。

『長慶宣明暦算法』 安藤有益(あります)著 延宝四年(1676) 刊本7冊

会津 (現福島県の一部) の算学者であった安藤有益が宣明暦の計算法について実例を挙げながら説明している。長慶宣明暦という表題は、中国唐王朝の長慶二年から施行されたことに由来する。

『宣明暦二十八宿吉日考入』 写本1冊 常楽院朱印

外題は表題の通りだが、内題は『大唐陰陽書』で、宣明暦より一代前の大衍暦の暦注書であり、最も古い暦注書である。宣明暦でも同じ暦注書が使われていたという。残念ながら、写された時代、筆者は不明である。