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貴重資料展示室

第13回常設展示:1995年7月18日〜1995年11月1日
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暦(2) 地方の暦

「暦」という言葉は暦法・暦本・暦日などの意味を持つ。暦法とは毎年の暦を作るために必要な計算方法や基本定数を書いたものである。貞享二年、渋川春海が考案した貞享暦法が施行される前の暦法は、すべて中国渡来の暦法を使用していたが、特に宣明暦法は、貞観四年(862)から823年もの間使用された。この間、朝廷の陰陽寮から出されていた暦は朝廷の衰退と共に地方へ行き渡らなくなり、南北朝時代頃から、各地で仮名暦が作られるようになった。三嶋暦、会津暦、京都の経師暦、南都暦(なんとごよみ)丹生暦(にうごよみ)、伊勢暦他がある。これらは暦の知識を持つ地方の陰陽師など、暦師によって作られた。三嶋暦は印刷された最も古い暦と考えられており、「三嶋」は版暦の代名詞として使われることもある。これらの暦は同じ宣明暦法を用いて計算されているが、計算する人が違えば誤算などもあり、地方暦どうしで日付が異なることも出てきて、問題になることもあった。江戸時代に入ると江戸で、暦の発行・販売を行なう暦問屋が現れた。

貞享二年(1685)に貞享暦が施行されてからは、ベースを江戸幕府の天文方が計算し、暦注を朝廷の陰陽寮が付けて発行されたもの以外、勝手に暦を作ることは許されなくなった。幕府から下げ渡された暦のとおりに作らなければならないので内容は同じであるが、折りたたまれた折暦 、冊子状の綴暦、巻物状の巻暦、1枚刷りの柱暦など多様な体裁があった。ただ薩摩暦(さつまごよみ)は遠隔の地であることを理由に独自に作ることを許された。

三嶋暦

三嶋暦1 三嶋暦2

南都暦

南都暦1 南都暦2

会津暦

会津暦1 会津暦2 会津暦3
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